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2021.08.06  おかえりモネの森

森林と防災を考える。自然のダム

第10週より、『おかえりモネ』は舞台を東京に移し、百音はいよいよ気象予報の仕事をはじめました。東京では、第7週「サヤカさんの木」で、気象キャスターの朝岡さんが連れてきた気象予報士・野坂さんとも再会。野坂さんは防災に関心があり「木の保水力」について調べていた人でした。第7週は 「山は自然のダム」や、伊達政宗公の「樹木で山々を埋める」国づくりなどにも触れていた週でしたね。そこで、ここでは森林と防災をテーマに振り返ってみたいと思います。

土壌だけではない、森林の保水力

ドラマの中で野坂さんは、大雨を受け止めるのは山の土と思われているが、実は森林全体としての保水力は土壌だけでなく、そこに生えている樹木の働きにも注目して研究していることを語ります。

実際、草木の生えていない禿山のような裸地では土壌の層が薄いため、降った雨が浸透せず剥き出しの斜面を流れてしまうのに対して、森林の豊かな土壌にはたくさんの小さな空気の隙間があって、ある程度の雨水を保水することができるので、降った雨を蓄えてゆっくり流し出し、河川の増水ピークを遅らせることができます。「自然のダム」「緑のダム」の解説としてよく知られる働きのひとつです。

私の森.jp 森のクイズ「森は水を保つ?」より

野坂さんの言うように、森林の保水力は土壌の効果だけではありません。まず、雨水の一部は樹上の葉などで遮られ、地上に達することなく蒸発します。また樹幹を流れ落ちる途中で表面から吸収される水も地上に達しません。そして樹木自身が水を必要とする生物なので、土中から水を吸い上げ、光合成に利用し、葉から蒸散させています。このように森林は、土壌の働きとは別に、樹木そのものが水を消費するので、大雨の時にも河川の氾濫被害を防止・軽減する役割を果たしていることがわかります。

では「自然のダム」が水害に対して万能なのかというと、もちろん、それほど単純な話ではありません。例えば、近年のように、土壌の保水力を上回る大量の雨が降ると、大量の地下水が浮力となって緩んだ地盤を持ち上げてしまいます。こうなると地形によっては地滑りを食い止めることは難しくなります。 生物多様性の保全をはじめ、林産物や森林空間の利用、水源の涵養、防災など、森林には本当に多様な働きがあります。災害が発生するたびに、様々な報告がされていますが、森林の災害には、その多様な働きが複雑に作用しあっていることがわかります。私たちの貴重な森林を守り、その恵みを得るためには、そうした防災の科学的な知見にも注目していく必要があるのではないでしょうか。

政宗公に学ぶ、豊かで安全な森林立国

「国づくりとは樹木で山々を埋めることである」という言葉は、伊達政宗がある僧に教わったと資料にあります。政宗はその言葉に従い、山に樹木を植えて川の氾濫を防ぎ、水や水路を確保して荒れた土地を農地や町へと変えていきました。また政宗は各地から良質の松や杉の苗木を取り寄せて防風林、防雪林を作らせるなど、積極的な造林を行いました。氾濫を繰り返す川と荒れ地は、豊かな米どころとして栄えるようになり、現代に繋がります。

緑豊かな仙台平野(2009年撮影)
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by BehBeh

河川の中流や下流に暮らしている人にとっては、なかなか上流の山や森とのつながりを実感しにくいものです。また、地方から移り住んだ人やその子供たちが暮らす都市部には、防災に役立つ過去の災害史を知らずに過ごしている人も多いでしょう。

歴史が好きな人は、地域の歴史を学んでみることで、その土地の地理的な特徴を知ることができます。また、休日にリクリエーションやワーケーションのプログラムなどを活用して上流の森林に親しみながら、その森がどんな森か知ることも有益です。そうして、大雨や台風の時、上流地域の森が気にかかるようになれば、上流の災害時には支援がしやすくなり、同時に下流地域の防災・減災にもつながってゆくのではないでしょうか。

取材協力:竹中 雅治(登米町森林組合)

2021年7月3日、静岡県熱海市で発生した土石流による被害に遭われた方にお悔やみとお見舞いを申し上げます。
第7週の35話放送(2021年7月2日)終了翌日に災害が発生し、「森林と防災を考える。」というテーマについて改めて考えることとなりました。地球温暖化問題が深刻化する中で、森林に関係する災害は繰り返される可能性があります。私たちは日頃より関心を持って学び、循環型の社会を目指しながら、災害に備えていく必要があります。

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