何にでもなる魔法の材料。組手什
2週目の『おかえりモネ』は林間学校の一環で林業体験に訪れた小学生を迎えて、森林組合も賑やかに。あわや遭難?という事件も起きてハラハラしましたが、森林組合の活動についても次々に紹介されていました。例えば第7話では、築100年を経ても寸分の狂いも生じない木造建築の旧登米高等尋常小学校や、林業の解説、木工体験などが出てきました。そんな中から今回は百音が解説していた「組手什(くでじゅう)」をご紹介します。
ノコギリも接着剤も不要、エコプロ展でもおなじみの家具キット
組手什の「組手」はクデと読み、建具や指物の職人さんが使う職人ことばです。「什」はジュウと読んで、日常使用する家具・道具を指す「什器(じゅうき)」のように使われることばです。ノコギリも接着剤も不要で、本棚や椅子などの家具を自在に組み立てられるキットの組手什は、百音が言っていた通り、まさに「何にでもなる魔法の材料」と言えるでしょう。
組手什の組み立て方は溝と溝をはめ込むだけ。様々な長さが用意されているので、デザインラックや本棚、デスク、キッチンボードなどが簡単に組み立てられ、釘や接着剤も使わないので、分解して何度でも組み直しすることも可能です。棚に載せるもののサイズに合わせて棚の高さを変えるなど、アレンジできるのも便利です。組手什のお披露目は、2010年の「COP10(生物多様性条約締結国会議・愛知県で開催)」の関連行事。以来、間伐材を利用しており、しかもリユース可能という点から、「エコプロダクツ展」の什器にも採用され、毎年活用されています。
東日本大震災の避難所で活躍し、全国区へ
2011年、東日本大震災の際、長期化する避難所生活では、プライバシーの確保ができず、身体的にも精神的にも大きな負荷がかかっていました。震災発生から1ヶ月もたたない4月に、国土緑化推進機構で東日本大震災復興支援に向けて、緑の募金の使途限定限定募金が創設され、これを利用して組手什を避難所に寄贈し、間仕切りや各種家具に活用する取り組みが始まりました。以前から組手什の製造・普及に取り組んでいた愛知県名古屋市、鳥取県智頭町に加え、被災県の木材利用や将来的な普及を見据えて、宮城県のRQ市民災害救援センター、登米町森林組合が加わり、登米町森林組合では県産材で組手什を作り避難所に寄贈しました。
組手什は避難所の間仕切りや本棚としてだけでなく、備品類の整理棚、掲示板や配布物の棚、子どもたちの学習机、診療所の薬品棚、仮設住宅での下駄箱、傘立て、テレビ台など、その場の必要に応じてさまざまな形で利用されました。組み立ての際に何人かで共同して行うことで心が通い合って良かったという声も伝えられています。
組手什は特許をとっておらず、各地の地元材を活用して広まることをめざしています。2016年の熊本地震の際には、登米町森林組合が組手什を寄贈する側にまわり、全国の組手什を製造販売するメンバーで構成する「組手什おかげまわし協議会」(当時)と、熊本地震の復興支援を行う各種団体で避難所を支援しました。みなさんの地元の木も組手什になっていたら、ぜひチェックしてみてください。
取材協力:竹中 雅治(登米町森林組合)
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