山には神様がいる。自然とともに生きる想い
「なまじ冗談でもないのよ、山には神様がいるんだから」。『おかえりモネ』第31話 で足を骨折したサヤカさんは百音に言います。その後、わたしは山の神様の怒りを静めるためにここに連れて来られた、その役目を引き継ぐのはあなただと、今度は本当に冗談となり二人が爆笑してこの場面は終わりました。でも、山に神様がいると考えるのは、サヤカさんだけではありません。
各地に伝わる山の神の言い伝え
『おかえりモネ』の舞台となった登米では、伝統行事として、12月に1年を締めくくり母親の労をねぎらう「おかの年越」や、権現様を祝う「権現様のとしとり」、そして山の神様を祝う「山の神のとしとり」などが行われていたと、登米市のWEBサイトに紹介されています。東北地方の多くの山では、12月12日を「山の神の日」「山の神の年取り」などとし、この日は山の神が森に生えている樹木を一本一本数えてまわるため、その邪魔をしないよう、山に入ったり木を伐ってはいけないとされています。普段山で仕事をしている人はこの日は休み、山の神様に御神酒やご馳走をお供えして感謝と加護を祈ります。また、山の神は「安産の神」とも言い伝えられてきたようです。
全国に目を移すと、多くの山でそれぞれの神様が祀られ、加護を祈る儀式などが行われています。また、山に入る時は必ず山の神様に安寧を祈願し、「月に一度の祭りの日は決して入山しない」など、先祖代々のしきたりを今なお厳しく守り継いでいる地域もあります。
急峻な森に深く分け入り、危険と背中合わせの山仕事をする人々は、こうした言い伝えや習わしを守り、山の神様のご加護を信じ、その恵みに感謝しながら、自然と共に生きてきたのですね。
身近にある鎮守の森を訪れてみよう
山で暮らす人に限らず、古来、日本人の多くは、海には海の神様、田んぼには田の神様、鎮守の森にも神様・・・そこかしこに神様がおられる、そして木や岩など身近な自然物にも「神が宿る」と信じてきました。
21世紀の現在も、「ご神木」の存在感に圧倒されたり、巨樹や巨岩などに出会って神聖な気持ちになったりする体験は誰にでもあるのではないでしょうか。そこには樹木や岩など自然物に堆積された長い「時間」があり、また、人智を超えた「何か」が存在するに違いありません。
あなたの地域に鎮守の森はありますか? 近くの山にはどんな神様が祀られているでしょうか。ご神木や、そうでなくても立派な巨樹があったなら、ふり仰いで、触れて、そこに流れる気の遠くなるような時間に想いを馳せてみませんか。
取材協力:竹中 雅治(登米町森林組合)
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