あなたは、人の波に疲れたことはありませんか?
自然と分断され、数多くのビルやマンションに囲まれ、混雑した交通機関で移動する都市型生活。ふと、かつて訪れた自然あふれる地域のことを恋しく思うこともあるかもしれません。
そこで今回ご紹介するのは、大阪から車で2時間少し、岡山県苫田郡鏡野町(とまたぐん・かがみのちょう)の森を借りることができるプロジェクトです。
ヒノキの生産量が日本一の、鏡野町が属する美作(みまさか)地域。そんな鏡野町で、森に興味はあるけれど関われていない人、関わり方がわからない人たちに、実際に森で過ごすことを体験してもらい、森の力を実感してほしいという思いで、森のレンタルプライベートスペースの運営が始まろうとしています。
森はにぎやかだ。
森のレンタルプライベートスペースの運営を始めようとしているのは、岡山県苫田郡鏡野町に住み、鏡野町で林業をしている松岡真由美(まつおか・まゆみ)さん。
真由美さんは「森に行きたいけれど接点がない」方々が、真由美さんの所有している森を楽しむことができるようにしたいと考えています。
レンタルは、1か月単位で、およそ1万円前後。レンタルするスペースの広さによって金額は多少変動するそうですが、借りた場所は「自分の森」として使えるのだそう。近所に民家もあるので、夜22時以降は大声を出さないなどある程度の約束ごとはありますが、小さな木は自由に切ったりと、キャンプ場よりも自由度の高い過ごし方ができます。
また、レンタルスペースを貸りるときは、真由美さんから直にガイダンスをしてもらえるので、安全な場所や危険エリアを把握することもでき、森に不慣れな人も安心です。
「現代社会において仕事に疲れた都市部の人にこそ、森の良さを知ってもらいたい」と話す真由美さん。
自身の大事な場所を「レンタル」という形で共有することで、人びとに森の「生命力」を感じて元気になってほしい、森に棲むたくさんの生き物の力を伝えたいというのが、真由美さんの原動力となっています。
真由美さんがこのプロジェクトを始めた背景は、幼い頃、徳島の山奥にある母親の故郷に夏休み滞在していましたが、大人になって自然と距離ができたことで、自然や田舎が恋しくなったという原体験からです。
そして鏡野町に移住し、林業をするために森に入ると、森の生き物たちにパワーをもらえる自分に気づきました。
そこで、真由美さんは、過去の自分のように、森に興味がある人たちに、その良さを実感してもらうことで、森を大切にすることを学び、森を守る行動をしてもらえることを目指して、森のレンタルプライベートスペースの運営を考え始めました。
「森にいると、生きてるな! と思うんです。目に見えないとも思うし、でも目でも感じているのかもしれない。なにより肌で力を感じるんです。
元気をもらう場所で、満たされる場ですね。森にいると、寂しさを感じないんです」
実際、森に静かに佇む植物も「生きている」。だから「森はとてもにぎやかだ」と真由美さんは言います。また、木々以外にも、野生のシカやリス、ウサギやふくろうに出会うこともあるそう。
週末は、森で。
「森はいろんな力に満ちていて、森にいると自分も元気になる。身近なパワースポットだ」
と真由美さん。
森に癒やされる以上に、森の木々や生命の力に感動する。そんな彼女の大事な場所を、わたしたちも体験できる「森のレンタル」。
また、真由美さんはご夫婦で林業を営んでいることもあり、滞在すると美作檜のリアルな伐木シーンも見ることができます。感覚とリアルな体験から森を味わい尽くす滞在ができそうです。
「週末は、森で」。そのくらい気軽に来てほしい、と話す真由美さんのパワースポットで自分なりの時間を森で過ごしてみませんか?
まずは森林探索や夜空探訪ツアーに参加してみるのもいいかもしれません。
共同執筆: Forest Styleナビゲーター養成講座第3期メンバー
INFORMATION
合同会社モリビト:https://www.moribito-kagamino.com/
Forest Styleナビゲーター・プロフィール
松岡 真由美(まつおか まゆみ)
大阪市出身。都会の人口密度に辟易し、岡山県鏡野町へ移住。現在は夫と2人で林業を営みつつ、リモートワークの仕事をしている。林業の現場作業をしているくせに、運動神経が悪い。森や林業の現状をひろく知ってもらい、よりよい状況に進歩させたいと考える。