あなたは三重県伊賀市というと、何を思い浮かべますか?
伊賀忍者、俳聖・松尾芭蕉、徳川家康の「伊賀越え」……近年では映画『忍びの国』にて嵐の大野智さんが主演をつとめたことで注目された伊賀ですが、観光だけではなく「食べられる森」に出かけて、自然の中の時間を体験してみるのはいかがでしょうか?
今回ご紹介するのは、耕作放棄地だった畑を整備して開かれた森をつくる「食べられる森」プロジェクト。この「食べられる森」プロジェクトは、人と自然が共存する持続可能な共同体づくりを実現したいという思いで、森を育てながら開かれた場づくりを実現しようと始まった活動です。「食べられる森」プロジェクトを始めたのは、三重県伊賀市と大阪府四條畷市(しじょうなわてし)の2拠点生活を送りながら、3年前に兼業農家に転身した大森雄貴(おおもり・ゆうき)さん。
大森さんは、放置されていた自宅の土地という資源を活用し、県外の人も地元の人も気軽に集まれる場づくりを始めました。そこにはたくさんの課題を横断的に解決する要素があったんです。
放置されていた実家の畑を先代から継ぎ、農家になったこと。
少子高齢化によって故郷の活気がなくなっているけれど、集落の役や当番などを通じて地域の人とのコミュニケーションが生まれたこと。
自然と関わることで感じられる心身の豊かさに気づいたこと。
すでに開墾している土地もありますが、大森さんが「食べられる森」として活用していこうとしている土地は、曾祖父の代から50年以上放置され続け、これから手を付けていく部分はまだまだ木が生い茂っている部分も。
まずは土地を整備し、いずれはりんごやみかんといった果樹を植えて、地域の人や観光に訪れる人が誰でも気兼ねなく収穫できるようにしたいと大森さんは話します。
「食べられる森」プロジェクトは、これらの活動を通して自然と人が共存し、循環していける森を育て、世代を経るごとに豊かになる生態系とつながりを地域にのこしていくことをめざしています。
大森さんがこのプロジェクトを始めた背景には、3年前、先代の他界に伴って実家と家業を継いだこと、そして幼少期の4世代同居の原体験がありました。
心身ともに健康であることの大切さを痛感すると同時に、田んぼを継いで米づくりを始めたことから、自然との関わりによる心身の充実感と、家族や集落を見守ってきた土地や自然について思いを馳せることが多くなったと、大森さんは語ります。
“物心ついた時から曽祖父や祖父、そして父は田んぼに向き合っていました。彼らが他界し、私が家や土地を継ぎましたが、それを取り巻く自然はずっとそこに佇み続けてきました。”
“故郷に息づく森や自然は、私の家族の物語だけではなく、地域の人々の営みや歴史を見守り続けてきたんじゃないかと思うんです。それなら自分もまた、地域の人と自然がつくってきた物語や歴史を大切に、次の世代に継いでいけたらと思ったんです。”
でも、せっかくやるなら楽しくやらないとですよね!
地域コミュニティと自然を共に再生させていく「食べられる森」プロジェクトに先駆けて、全国の仲間と有志で情報交換を行うネットワークを立ち上げている大森さん。仲間づくりも進めていきたいと意気込みます。
大森さんは、これまで伊賀市以外でも、仲間と共に畑を開墾してきました。
プロジェクトの大切なコンセプトである「人と自然のJUNKAN(循環)」のイメージ。
大森さんが仲間と共に屋久島にフィールドワークに行った際、滞在先のゲストハウスMOSS OCEAN HOUSEに描かれていた図です。
現在、りんごを種から植え、育てている大森さん。時間をかけて少しずつ成長するりんごの木のように、プロジェクトも少しずつ育まれています。
「食べられる森」プロジェクトが気になった方は、今後の活動を大森さんのSNSからチェックしてみてはいかがでしょうか?
共同執筆: Forest Styleナビゲーター養成講座第2期メンバー
関連リンク
- 循環グローバル探究コミュニティとは
- YouTube:「循環畑”いのちがめぐる” 循環畑とは〜土は生死が共にある舞台」
- noteマガジン:ゼロから始める伊賀の米づくり〜新米兼業農家の記録〜(Yuki Omori)
- noteマガジン:新米米農家の「土中環境」の探求と環境再生の実践 (Yuki Omori)
- 屋久島のMOSS OCEAN HOUSE
Forest Styleナビゲーター・プロフィール
大森 雄貴(おおもり ゆうき)
三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援など、自然と人が共に豊かになる場づくりに取り組んでいる。
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